ちいつる
B-09気づき

写真・動画編集でAIに頼む前に知っておくべき技法

構図・色調・テンポという言葉を持つだけで、要望が具体的になる。

触ってみる丸をドラッグして、2本のメーター(交点への寄り・余白のバランス)が同時に伸びる位置を探してみてください
余白
交点への寄り
29
余白のバランス
100

中央すぎる。どこかの交点へ寄せると画面に緊張感が出る。

面白いのは、交点に寄せるだけでは足りないこと。端に張り付くと「余白」のメーターが落ちる。位置と「間」の両方が噛み合う一点——それが三分割法の交点だと、指先で腑に落ちたはず。

構図(三分割・余白)の基礎を知る

画面を縦横3分割した線の交点付近に被写体を置く「三分割法」は、中央に置くよりも安定した見栄えになりやすい。また、被写体の周囲に意図的な余白(ネガティブスペース)を残すと、写真に「間」が生まれ、窮屈さが消える。

触ってみる被写体をドラッグして、道(導線)が向かう先へ動かしてみてください
視線の集まり
0

道(リーディングライン)が向かう先へ被写体を寄せてみてください。

三分割法と並ぶもう1つの構図の型が「リーディングライン」。道や柵などの線が視線を運び、その先に被写体を置くと目が自然に吸い寄せられる。

被写体を「際立たせる」手段は配置だけではない。背景をぼかして手前の主役だけをくっきり見せる被写界深度(ボケ)のコントロールも、主役を決める強力な技法だ。

触ってみるスライダーで絞り(F値)を変え、背景のボケ量を確かめてみてください
絞り(開放 ⇔ 絞り込み)f/1.4
f/1.4

背景が大きくボケて被写体が主役に(ポートレート向き)

F値を開けるほど背景がとろけ、主役が浮き上がる。「ポートレートモードで」「背景をぼかして」と頼むとき、実際に動かしているのはこのF値だ。

色調補正の考え方(トーン・彩度)

「明るくする」だけでなく、色温度(暖色寄り・寒色寄り)、彩度(鮮やかさ)、コントラスト(明暗差)を別々の軸として扱うと、狙った雰囲気に近づけやすい。統一感を出したい場合は、全体の色調を1つの方向(例: やや暖色寄りで低彩度)に揃える発想が使われる。

触ってみる3つのスライダーで同じ風景の色調を変えてみてください

いまの雰囲気: 補正なしに近いニュートラル

色温度(寒色 ⇔ 暖色)
0
彩度(鮮やかさ)
100%
コントラスト(明暗差)
100%

同じ風景が、色温度・彩度・コントラストの3軸を別々に触るだけで一変する。「暖色寄りで低彩度に」——短い注文に見えて、動かす軸を2つ正確に言い当てている。

明るさの調整には限界がある。上げすぎると白飛び、下げすぎると黒つぶれが起き、失われた階調は後から戻せない。ヒストグラムは、その「どこにどれだけ画素があるか」を可視化した地図だ。

触ってみる露出とシャドウ持ち上げを動かし、両端に張り付く画素(クリップ)を観察してみてください
黒つぶれ 0.0%
白飛び 0.0%
露出補正(明るさ)
0.0EV
シャドウ持ち上げ(黒を浮かせる)
0%

端に張り付いた(赤い)画素は色情報が失われ、後から戻せない。持ち上げは黒つぶれを救えるが、締まりは減る。

端に張り付いた画素には、もう情報が残っていない。「白飛びしないギリギリまで明るく」と言えるかどうかは、このグラフの両端を読めているかにかかっている。

コントラストや明るさをより自在に操るのがトーンカーブ。入力の明るさを出力へどう写像するかを線の形で決め、S字にすればメリハリ、持ち上げればふんわりマットな質感になる。

触ってみる2つの制御点を上下にドラッグしてカーブの形を変えてみてください
入力(左)→ 出力(右)の階調
下段=補正前の等間隔グレー

ほぼ恒等(補正なしに近い)

傾きが急な帯ほど、その明るさのコントラストが強い。「シャドウを持ち上げてマットに」と言われたら、左下の点を上げればいい——言葉と操作がここで一対一につながる。

カット割り・テンポの型

同じ画角のカットを長く続けると単調に感じられやすく、テンポよく感じさせたい場面ではカットの長さを短く刻む。逆に感情の余韻を持たせたい場面では、あえてカットを切り替えず長く見せる。「テンポを変える」とは、カットの長さそのものを操作することを指す。

触ってみるカットの長さのスライダーを動かして映像のテンポを変えてみてください
カット1つの長さ12秒で7カット
1.6秒

落ち着いたテンポ。説明やインタビュー向き

中身は同じ4カットの繰り返し。それでも尺の刻み方ひとつで、疾走感にも余韻にも化ける。動かしていたのは、カット1つの長さだけだった。

動きの見え方を決めるもう1つの軸がフレームレート(fps)だ。1秒あたりのコマ数が少ないとカクつき、多いとなめらかに見える。スロー映像に高fpsが求められるのはこのためだ。

触ってみるfpsのスライダーを下げて、動きがカクつく様子を上段のなめらかな動きと比べてみてください
フレームレート8 fps
8fps

カクカク(パラパラ漫画のよう)。低fpsは動きが飛んで見える

上段のなめらかな動きに対し、fpsを下げた下段は飛び飛びになる。「なめらかにして」「ぬるぬるのスローで」——こうした要望が動かしたいのは、1秒あたりのコマ数だ。

投稿先によって求められる縦横比(アスペクト比)は違う。同じ素材でも16:9・1:1・9:16では主役の見せ方が変わり、トリミングで主役を枠に収める判断が要る。

触ってみる比率ボタンを切り替え、クロップ枠をドラッグして主役を枠に収めてみてください
YouTube・横動画主役が枠内

比率が変われば、枠に入る画そのものが変わる。「正方形で」「ストーリー用に縦で」と伝えるのは、どの比率で切り取るかを選ぶこと。トリミングは、小さな構図のやり直しでもある。

AIへの編集依頼で使える語彙

「いい感じにして」より「三分割法に沿ってトリミングして」「彩度を少し落として落ち着いた印象にして」「テンポよく見えるようカットを短くして」と伝える方が、狙った結果に近づく。技法名を知っているかどうかが、そのまま指示の解像度になる。

触ってみる技法タグを押して重ね、写真と指示文がどう具体化するか見てみてください
いまの指示文

旅先の写真をいい感じに編集して。

タグ(=技法の語彙)を積むほど、仕上がりも指示文も具体的になる。「いい感じ」との差がそのまま解像度の差。

タグを積むほど、写真も指示文も具体的になっていく。ここまでの各デモで触れた語彙が、そのままAIへの注文の解像度になる。「いい感じ」との差は、知っている言葉の数の差だ。

AIに投げるプロンプト例

旅行で撮った写真を編集したいです。 以下の技法の考え方を踏まえて、具体的な編集手順を提案してください。 - 被写体の配置を三分割法に沿って整えるトリミング案 - 全体を少し暖色寄り・低彩度にして落ち着いた印象にする色調補正 - 明るさ・コントラストの調整の目安