+/− でどれか1つの変数を動かすと、その担当グリークが価格の動きを言い当てる。
動かした変数のとなりに置いたグリークだけが、価格の動きをほぼ言い当てる。ベガはボラティリティ係、シータは時間係。5つのグリークスは別々の指標ではなく、「どの変数が動くと価格がどれだけ動くか」を担当ごとに割り振った一枚の地図だと分かる。原資産価格を大きく動かしたときだけ予測が少し外れるのは、価格の曲がりを測るガンマがもう一枚重なっているため。
デルタ・ガンマ・ベガ・シータ・ローの計算式
オプションの価格は、原資産価格・ボラティリティ・残存期間・金利という4つの変数が動くたびに変化する。グリークスは「どの変数が動いたとき、価格がどれだけ動くか」を表す感応度で、5つある。
- デルタ(Δ): 原資産価格が1動いたときのオプション価格の変化量。コールは0〜1、プットは-1〜0の範囲を取る
- ガンマ(Γ): デルタ自体の変化率。原資産価格の変化に対してデルタがどれだけ加速するか
- ベガ(ν): ボラティリティが1%動いたときの価格変化量
- シータ(Θ): 時間が1日経過したときの価格変化量(通常マイナス。時間価値の減少)
- ロー(ρ): 金利が1%動いたときの価格変化量
実際の数値計算・スライダーでの体感は、既存の/greeks(オプションGreeks計算)で確認できる。ここでは計算式そのものより「何と何が対応しているか」の地図を持つことに主眼を置く。
接点を右へ滑らせると接線がだんだん急になり、左へ寝かせるとほぼ水平になる。この傾きこそがデルタで、ディープ・イン・ザ・マネーでは1に、アウトでは0に近づく。「原資産が1円動くと価格がいくら動くか」を、数式ではなく線の角度として読み取れる。
5つの中で目立たないローも、金利を動かせばコールは上がりプットは下がる非対称がはっきり出る。同じ金利変化がコールとプットに逆符号で効くのは、行使価格の割引現在価値が変わるため。
Black-Scholesモデルとの関係
グリークスは、Black-Scholesモデル(原資産価格・行使価格・残存期間・金利・ボラティリティからオプション価格を算出する数式)を各変数で偏微分して得られる。だから「価格を計算する式」と「感応度を計算する式」は別物ではなく、同じ数式を変数ごとに切り出した断面にあたる。
モデルの前提(原資産価格が対数正規分布に従う、ボラティリティは一定、取引コストなし)が崩れる局面ではグリークスの値も現実と乖離する。特にガンマが大きい局面(満期間際・行使価格付近)はヘッジの再調整頻度が上がり、モデルの前提との乖離が損益に直結しやすい。
デルタ ≒ (C(S₀+h) − C(S₀−h)) / 2h。バンプ幅 h を小さくすると割線が接線に近づく。
偏微分と身構えなくてよくて、やっていることは価格をほんの少しずらして差を取るだけ。バンプ幅を縮めるほど割線が接線へ寄っていき、差分商が解析デルタの値へ収束する。感応度の式が価格式の断面だという話が、ここでは指先の操作として確かめられる。
残存期間を短くすると、なめらかなBS価格曲線が満期の折れ線(本質的価値)へ潰れていく。塗った面が時間価値で、満期に向けてゼロへ吸い込まれる。この曲率がゼロへ潰れる瞬間こそガンマ・シータが暴れる局面。
シミュレーションゲームへの組込み例
グリークスをゲームに組み込むと「相場観を当てるゲーム」から「リスクを管理するゲーム」に性格が変わる。具体的な組込み例:
- デルタを「ポジションが実質的に何株分の株を持っているか」に換算して表示し、プレイヤーに残高感覚を持たせる
- ガンマが一定値を超えたら警告を出し、「ヘッジの再調整が必要」というイベントを発生させる
- シータを「毎日減っていく残高」として可視化し、時間経過そのものをコストとして体感させる
- ベガをボラティリティが急変するイベント(決算発表・指標発表)と組み合わせ、ポジションの評価額が急変する演出に使う
再生すると、時間価値が最初はゆるやかに、満期が近づくほど加速して溶けていくのが分かる。「シータを毎日減っていく残高として可視化する」という組込み例は、この曲線をそのままゲームのUIにする発想。
原資産価格は100円で固定。あなたはATMコール1枚をIV30%で建てた。 決算などでIV(予想変動率)だけが動くと評価額はどうなる?
原資産は1円も動いていないのに損益が出る——これがベガのリスク。 買い方はIV上昇で得、売り方はIVクラッシュで得をする。
原資産が1円も動いていないのに、IVが跳ねただけで損益が動く。これがベガのリスクであり、決算・指標発表イベントと絡めた演出の核になる部分だ。買い方と売り方でIVクラッシュの符号が逆になるので、決算前後の駆け引きをそのままゲームに落とし込める。
リスク管理への応用
実務では単一のグリークだけでなく、ポートフォリオ全体のデルタ・ガンマを合算して管理する(デルタニュートラル・ガンマヘッジ等)。個別のオプション1枚のリスクではなく、保有ポジション全体としての感応度を見る発想が核心にある。
あなたはコールを1枚売った状態(−デルタ×100株ぶんのリスク)。株を買ってデルタを打ち消そう。
価格が動いてデルタがずれました(ガンマの効果)。再調整のタイミングです。
ニュートラルに直した直後でも、価格を動かせばネットデルタはまた顔を出す。これがガンマの手触り。ヘッジした場合と放置した場合で損益がどれだけ開くかを見比べれば、なぜ一枚単位ではなくポジション全体の感応度を追うのかが腑に落ちる。
ボタンでポジションを積んでみよう。コール買い+プット買いで「デルタ中立なのにガンマは残る」を作れる。
実務の勘所は、一枚ずつではなくポジション全体で感応度を足し合わせること。コール買いとプット買いを1枚ずつ積むと、ネットデルタはほぼ打ち消し合う一方、ネットガンマとネットベガはしっかり残る。デルタニュートラルがリスクゼロを意味しないことが、合算した数字にそのまま出る。
AIに投げるプロンプト例
オプションのポジション管理シミュレーションを作りたいです。 デルタ・ガンマ・シータを使って、以下の要件で設計してください。 - ポジションのデルタを「実質株数」として画面上部に常時表示する - ガンマが閾値を超えたらヘッジ推奨の通知を出す - 1日経過するごとにシータ分だけ評価額を減らす - Black-Scholesモデルの前提(ボラティリティ一定、対数正規分布)が崩れる局面の演出案も提案してほしい
デルタを原資産価格の関数として描くとS字を描き、その傾きがガンマにあたる。残存期間を縮めるほどS字はATM付近で急に立ち上がり、ガンマの山が鋭くなる。冒頭で触れた「ガンマが大きい局面ほどヘッジ再調整が忙しく、モデルとの乖離が損益へ直結する」が、この一枚に凝縮されている。