ちいつる
A-18リファレンス

音楽理論とBGM構成の作法

「鳴らし方」ではなく「作り方」。外部音源に頼らず自己完結する前提で理論を扱う。

触ってみるコードをループ再生し、鳴り続ける和音の上で鍵盤を弾いてメロディを重ねる
IC
viAm
IVF
VG
再生してから鍵盤を弾くと、コードの上にメロディが乗る。

鳴り続けるコードの上を鍵盤でなぞると、それだけで曲の骨格になる。和音が切り替わるたびに、指を置くと落ち着く音(印のついたガイド音)が入れ替わっていくのが見える。メロディとは、動いていくコードの上をどう歩くかの選択だ。

触ってみるスライダーで2音の音程を変え、協和度と波形の変化を見て聴く
完全5度近似整数比 3:2 ・ 周波数差 130.4Hz
7半音
比が単純なほど協和(滑らか)、複雑なほど不協和(うなり・ざらつき)。

比が単純な完全5度(3:2)は波形が整って滑らかに、短2度やトライトーンは波形が乱れてざらつく。気持ちよさと緊張の差は、突き詰めれば2音の周波数比がどれだけ単純か。ここが後で出てくるコードの安定・不安定を、そのまま支えている。

コード進行とスケールの基礎

メジャースケール(明るい響き)とマイナースケール(暗い響き)のどちらを軸にするかで曲全体の印象が決まる。コード進行は「トニック(安定)→サブドミナント(やや不安定)→ドミナント(最も不安定)→トニック(解決)」という緊張と解決の往復として捉えると、耳に馴染む進行を組み立てやすくなる。

触ってみる各小節をタップしてコードを入れ替え、4小節の進行を組んで再生
トニック(安定)サブドミナント(やや不安定)ドミナント(最も不安定)トニック(安定)
トニックで着地——きれいに解決して終わる。

Vで終わらせると「続きが聴きたい」宙づり感が残り、Iに戻すとすとんと着地する。並べたコードの緊張度を折れ線で眺めると、進行づくりとはこのカーブをどう描くかの作業だと見えてくる。

触ってみる第3音と第5音の積み方を変え、和音の性格の違いを聴く
第3音
第5音
長3度+完全5度。明るく安定した基本の和音。

第3音を半音下げれば長→短(明→暗)、第5音を動かせば減・増(緊張・浮遊)。進行を組む前段階の、和音ひとつひとつの表情は、たった2音をどこに積むかで決まってしまう。

Aメロ-Bメロ-サビ的な展開構成

Jポップに典型的な構成は「Aメロ(状況提示・抑えた音量)」「Bメロ(緊張を高める橋渡し)」「サビ(最も盛り上がる主題)」の3段階。BGMとして使う場合も、この緊張と解放のリズムをループの中に小さく持たせると、単調なループより聴き疲れしにくくなる。

触ってみる終止形を選んで、フレーズの「終わり方」の違いを聴き比べる
最も強い解決。「終わった」と最も納得できる終わり方。

正格終止は句点「。」、半終止は読点「,」、偽終止は「と思わせて…」の中断。展開とは、フレーズのどこに句読点を打ち、どこをあえて開いたままにするかの配置術だ。Bメロの終わりを半終止で開いておくと、サビの着地がぐっと効く。

触ってみるサビ直前の『溜め』の深さと転調を変え、同じサビの解放感がどう変わるか聴く
Aメロ溜めサビ
サビの落差 54サビの高さは固定・谷だけが動く
サビ直前の「溜め」の深さ
20
サビの転調
溜めを深くするほど、同じサビでも解放感が増す。

サビの音量はそのままでも、直前の「溜め」を深く落とすほど、サビに入った瞬間の解放感は大きくなる。盛り上がりは絶対的な大きさではなく、直前との落差から生まれている。仕上げにサビでキーを上げれば、視界がふっと開ける転調の効果も乗せられる。

ジャンル別の定番進行とその実装サンプル

作業用lofiは「I→vi→IV→V」のような穏やかな循環進行、和風は五音音階(ヨナ抜き音階)を使うと即座に和のニュアンスが出る。ホラーは短2度(半音でぶつかる音)や不協和音程を意図的に使い、8bitチップチューンは矩形波・三角波の組み合わせで機材の制約感そのものを演出に使う。

触ってみるスケールを切り替えて同じ長さのフレーズを聴き比べてください
キー(主音)——移調しても性格は変わらない
C
全音主体の並び。明るく開けた響き。

ヨナ抜きにした瞬間に和の空気、半音をぶつけた瞬間に不穏さ。ジャンルの「らしさ」は、使う音の選び方=スケールでほとんど決まってしまう。キーを移調しても性格が変わらないことも、あわせて試してほしい。

触ってみる波形(音色)を切り替えて、同じメロディの質感の違いを聴く
奇数倍音。8bitチップチューンのメロディの定番。

音の高さは同じでも、矩形波なら一気に8bit、ノコギリ波ならシンセリードの質感になる。「らしさ」を決めるのはスケールだけではない。音色(波形=倍音構成)も、ジャンルの記号として同じくらい効いている。チップチューンがあえて矩形波・三角波を選ぶのは、その制約感そのものが記号になるからだ。

場面(作業用・戦闘・ホラー等)に合わせた理論選択

テンポ(BPM)と音数の密度が、場面に合う・合わないを最も大きく左右する。作業用は遅め・音数少なめで邪魔をしない設計、戦闘・ボス戦は速いテンポと厚い音数で緊張感を煽る設計にする。「どの理論を選ぶか」の前に「この場面でプレイヤーにどんな感情を持ってほしいか」を先に言語化しておくと、理論の選択が自然に決まる。

触ってみるレイヤーを重ね外しして、音数の厚みと場面の強度の関係を聴く
2/5

コードとハイハットだけなら作業用、キック・ベース・メロディまで重ねれば戦闘級。同じループでも、層を足し引きするだけで場面の強度は動く。密度は、編曲の最後にまとめて回せる強力なつまみだと思っておくといい。

触ってみるテンポと音数密度を変えて、場面に合う体感を刻んで探す
テンポ
96 BPM
音数密度
通常フィールド向き(軽快に前へ進む)

遅く疎なら探索や作業用、速く密なら戦闘。同じ刻みでも、BPMと密度という2つのつまみだけで体感はまるで別物になる。どの理論を当てるかより先に、この2軸で場面の温度を決めてしまうのが近道。

AIに投げるプロンプト例

Web Audio APIで自己完結するBGMを作曲したいです。 外部音源ファイルは使わず、コード上でループ楽曲を合成してください。 - 作業用lofi、テンポ70〜90BPM程度 - I→vi→IV→Vの循環進行をベースに - Aメロ的な抑えたパートとサビ的な盛り上がりパートを交互にループさせる - クロスフェードで別トラックへ切り替えられる構成にしてほしい