鳴り続けるコードの上を鍵盤でなぞると、それだけで曲の骨格になる。和音が切り替わるたびに、指を置くと落ち着く音(印のついたガイド音)が入れ替わっていくのが見える。メロディとは、動いていくコードの上をどう歩くかの選択だ。
比が単純な完全5度(3:2)は波形が整って滑らかに、短2度やトライトーンは波形が乱れてざらつく。気持ちよさと緊張の差は、突き詰めれば2音の周波数比がどれだけ単純か。ここが後で出てくるコードの安定・不安定を、そのまま支えている。
コード進行とスケールの基礎
メジャースケール(明るい響き)とマイナースケール(暗い響き)のどちらを軸にするかで曲全体の印象が決まる。コード進行は「トニック(安定)→サブドミナント(やや不安定)→ドミナント(最も不安定)→トニック(解決)」という緊張と解決の往復として捉えると、耳に馴染む進行を組み立てやすくなる。
Vで終わらせると「続きが聴きたい」宙づり感が残り、Iに戻すとすとんと着地する。並べたコードの緊張度を折れ線で眺めると、進行づくりとはこのカーブをどう描くかの作業だと見えてくる。
第3音を半音下げれば長→短(明→暗)、第5音を動かせば減・増(緊張・浮遊)。進行を組む前段階の、和音ひとつひとつの表情は、たった2音をどこに積むかで決まってしまう。
Aメロ-Bメロ-サビ的な展開構成
Jポップに典型的な構成は「Aメロ(状況提示・抑えた音量)」「Bメロ(緊張を高める橋渡し)」「サビ(最も盛り上がる主題)」の3段階。BGMとして使う場合も、この緊張と解放のリズムをループの中に小さく持たせると、単調なループより聴き疲れしにくくなる。
正格終止は句点「。」、半終止は読点「,」、偽終止は「と思わせて…」の中断。展開とは、フレーズのどこに句読点を打ち、どこをあえて開いたままにするかの配置術だ。Bメロの終わりを半終止で開いておくと、サビの着地がぐっと効く。
サビの音量はそのままでも、直前の「溜め」を深く落とすほど、サビに入った瞬間の解放感は大きくなる。盛り上がりは絶対的な大きさではなく、直前との落差から生まれている。仕上げにサビでキーを上げれば、視界がふっと開ける転調の効果も乗せられる。
ジャンル別の定番進行とその実装サンプル
作業用lofiは「I→vi→IV→V」のような穏やかな循環進行、和風は五音音階(ヨナ抜き音階)を使うと即座に和のニュアンスが出る。ホラーは短2度(半音でぶつかる音)や不協和音程を意図的に使い、8bitチップチューンは矩形波・三角波の組み合わせで機材の制約感そのものを演出に使う。
ヨナ抜きにした瞬間に和の空気、半音をぶつけた瞬間に不穏さ。ジャンルの「らしさ」は、使う音の選び方=スケールでほとんど決まってしまう。キーを移調しても性格が変わらないことも、あわせて試してほしい。
音の高さは同じでも、矩形波なら一気に8bit、ノコギリ波ならシンセリードの質感になる。「らしさ」を決めるのはスケールだけではない。音色(波形=倍音構成)も、ジャンルの記号として同じくらい効いている。チップチューンがあえて矩形波・三角波を選ぶのは、その制約感そのものが記号になるからだ。
場面(作業用・戦闘・ホラー等)に合わせた理論選択
テンポ(BPM)と音数の密度が、場面に合う・合わないを最も大きく左右する。作業用は遅め・音数少なめで邪魔をしない設計、戦闘・ボス戦は速いテンポと厚い音数で緊張感を煽る設計にする。「どの理論を選ぶか」の前に「この場面でプレイヤーにどんな感情を持ってほしいか」を先に言語化しておくと、理論の選択が自然に決まる。
コードとハイハットだけなら作業用、キック・ベース・メロディまで重ねれば戦闘級。同じループでも、層を足し引きするだけで場面の強度は動く。密度は、編曲の最後にまとめて回せる強力なつまみだと思っておくといい。
遅く疎なら探索や作業用、速く密なら戦闘。同じ刻みでも、BPMと密度という2つのつまみだけで体感はまるで別物になる。どの理論を当てるかより先に、この2軸で場面の温度を決めてしまうのが近道。
AIに投げるプロンプト例
Web Audio APIで自己完結するBGMを作曲したいです。 外部音源ファイルは使わず、コード上でループ楽曲を合成してください。 - 作業用lofi、テンポ70〜90BPM程度 - I→vi→IV→Vの循環進行をベースに - Aメロ的な抑えたパートとサビ的な盛り上がりパートを交互にループさせる - クロスフェードで別トラックへ切り替えられる構成にしてほしい